未来に向けて~文化がつないだ日中韓の高校生~
このページでは、東アジアの相互理解につながる活動をされている方に、日々の取り組みやその活動にこめた想いについてコラムをご寄稿いただいています。
今回は、京都市立銅駝美術工芸高等学校長の吉田 功さんです。
この夏、銅駝美術工芸高等学校の高校生たちが「日中韓青少年文化交流事業」に参加した時の様子をご紹介いただきます。
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「日本語が使えないのは謎の開放感で心地よかった」
今夏、「東アジア文化都市2017日中韓青少年文化交流事業」において、京都での受け入れ、大邱広域市、長沙市への派遣に参加した生徒は、言葉の違いがありながらも、貴重な出会いと経験をしました。
2都市からの派遣の受け入れでは、京都を代表してホスト校をさせていただくにあたり、本校らしく美術を学ぶ生徒ならではの交流プログラムを計画しました。東山清水地区をグループでフィールドワークし、3都市の青年それぞれの視点で発見したこと、自国文化との違いや共通点などを意見交換し画像や映像とともにタブレットでムービー制作しました。
また二条城やマンガミュージアムの見学、茶道や和菓子作り体験などを通じて日本文化を紹介しました。韓国の大邱広域市と中国の長沙市への生徒派遣では、開催都市の関係者の方々の丁寧な準備と心温まるもてなしで盛りだくさんの文化視察や文化体験をしました。
本校では夏季休暇中に事前学習の日を設け、参加するすべての生徒が歴史や文化、韓国語・中国語について学ぶとともに、事前課題に取り組みました。この事業に参加した1、2年生は全員タブレット「iPad」を入学時に購入している生徒です。
校内グループのサイトを活用して、生徒は、事前学習で調べたこと、気づいたことなど様々な記事を投稿し、教員もこのサイトに入って生徒の投稿にコメントをしました。また、先に大邱広域市に派遣された生徒が帰国した際には、長沙市派遣生徒にアドバイスをするなど交流事業に役立てました。
大邱広域市派遣の際には教員が「iPad」を持参し、Zoomというアプリを活用して現地の生徒の活動の様子を日本の教員に生中継することを試みました。
今回この事業に参加して、生徒だけでなく私たち教員も国際交流活動への指導、新しい教育方法にチャレンジすることができました。関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

iPad を使った学習
「私たちは、ただ自分たちの“当たり前”と異なるだけで否定するのではなく、互いに“知る”ことがまず大切・・・無理に受け入れようとする必要はないけれど、交流していくことによって相手を知り、少しずつ意見を交換しながら自分の考え方にもその国の人の考えを取り入れていくこともできる」
生徒はこのように事後レポートを書いています。
江戸時代、対馬藩で朝鮮との外交に尽力した雨森芳洲が、「朝鮮と交際するには、彼らの物の考え方、国の体制をまず知ることが大事」、「他国の嗜好、風俗、礼儀作法を日本の基準で考えては間違いが生じる」と主張した大切な外交姿勢に通じるように思います。

韓国国楽の体験の様子
受け入れ、派遣、どちらのプログラムも、猛暑の中、生徒は熱心に取り組み、立派にやり遂げました。
言葉の違いによる不安や戸惑いを、考えられる様々な工夫でコミュニケーションをとる努力をしたこと、そして何よりも3都市の青年それぞれが、話したい、伝えたい、仲良くなりたい、という熱い思いで、ともに時間を過ごしたことは、大きな成果です。
もちろん、言葉だけでなくお国柄、文化や習慣、考え方の違いを次々経験することにもなりましたが、その違いを相互理解することが友好の基盤であることをしっかり学びました。直接対面し、対話し、協働で活動したからこそ、国際関係において様々な課題があっても、限られた情報だけでイメージをつくり判断するのではなく、自ら確かめ、感じ、考えたことをもとに判断し主張していく姿勢を学びました。
「問題があるからといって閉鎖的になるのではなく、解決のために積極的に行動することが大切だと感じました。」そう生徒は書いています。未来を担う3都市の青年たちの成長と活躍に大いに期待したいと思います。

太極拳体験の様子
Profile
吉田 功
京都市立銅駝美術工芸高等学校長