東アジアの留学生と京都
このページでは、東アジアの相互理解につながる活動をされている方に、日々の取り組みやその活動にこめた想いについてコラムをご寄稿いただいています。
今回は、株式会社フラットエージェンシー取締役会長の吉田光一さんです。
京都市内の東アジアの留学生との関わりや、これからについてコラムをご寄稿いただきました。
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東アジアの方々を、社員でお迎えすること
私の会社では、京都の学生や留学生への賃貸不動産の紹介や、まちづくり業としての不動産事業を営んでいます。
私自身がバックパッカーで放浪の旅に出た際に、ロンドンのフラットエージェンシーという名前の会社でお部屋を紹介いただいた際に、とても親切な対応に感激し、帰国後、日本に来られた外国の方々にお住まいをご紹介したいと、京都市内で同じ社名の看板を掲げ創業しました。
最初は京都には大学が多いこともあり、大学生のお住まいの紹介を中心に展開し、「不動産はまちづくり」という考え方をふまえ、地域にある課題を社員と話し合い、その中から当初から進めたかった、留学生への賃貸仲介の専門店舗を出店することになりました。
京都府のジョブパークで、当時の担当の方がよくしてくださり、外国人の方を3名雇うことができました。
元々、留学生でもあったこともあり、彼らは仕事内容を誇りに感じて働いてくれました。むしろ優秀な方が多く、通常の業務だけでなく留学生へ様々な生活のアドバイスもしてくれました。
当時はコミュニケーションなどの不安から、留学生の賃貸契約に躊躇されるオーナー様もみられましたが、彼らのおかげでオーナー様の認識も少しづつ変わっていったように思います。
留学生が困っていること
留学生の方々や、社員との話から様々なサポートが広がっていきました。
当時は保証人がないと住めない賃貸契約や法律の問題に対して、留学生入居手続き「保証人制度」の簡素化を行う経済的支援のほか、2002年に日本で初めて、留学生向けシェアハウスが生まれました。
留学生が身寄りの無い海外で勉強や生活するのは、精神的にも経済的にも大変なことです。
私たちが思っているよりも、マンションの中で留学生同士の交流はなかなか生まれにくく、日本人とも交流できる機会や関係性を深める機会はないということ。
家賃や授業料などの経済的な問題で辞められる学生もおられること。
留学生からはキッチンはシェアでも良いという意見が多くみられ、そこで生まれたのが留学生シェアハウスのアイデアでした。

留学生向けシェアハウス
旧来の学生アパートを改築し、入居者同士で楽しい会話や食事ができるコミュニティスペースを新たに設け、留学生の異文化交流の場に。その場所の管理は私たちが進めながら、留学生、日本人学生そして当社スタッフ相互のコミュニケーションを深めるために、バーベキュー大会、懇親会などを行いました。
1万人が来る「新大宮商店街の夏まつり」では、毎年留学生と露店を出店し、地域の方々にも認知されるようになってきました。社員もみんな楽しんでやってくれています。 そういった交流から留学生同士でもお互いの理解や生活のルールなどの共有も進んでいったように思います。
京都市内での留学生に対する支援の広がり
京都市内では留学生への様々な支援が生まれています。日本で働きたいという留学生は多いが、「京都には知っている会社が無いため、東京での就職を希望する」という傾向があることから、留学生を対象に、京都市や京都の有力企業とともに、日本の企業で働くということをテーマにしたセミナーとワークショップが生まれました。留学生にとって充実したプログラムとなり、留学生の反応もとても良いものがありました。

日本企業で働くということ「きっと役に立つ留学生のためのセミナー / ワークショップ」 2016年6月19日開催
そのほか、2015年には「留学生スタディ京都ネットワーク」が生まれています。
京都における留学生の誘致及び受入体制の整備や留学生の知識・経験を地域の国際化・活性化に活かすための仕組みづくりをオール京都で取り組み、「大学のまち・学生のまち」としての京都の魅力向上を図る団体です。 共感した大学、日本語学校、専修学校、企業、経済・業界団体、公的機関等、様々な団体が構成団体として入っています。
留学生に対するこのような組織は全国でも珍しく、京都は先進的なまちだと思います。
積極的な交流対話を行うこと
2016年に京都市の留学生は1万人を突破し、その内、中国、韓国、台湾の方々が7割以上を占めています。
受け入れについてコミュニケーションなど不安に思われる方もおられるかと思いますが、例えば、油の捨て方やゴミの出し方など、説明すればそのようにしてくれます。日本の仕組みはこうですよと説明すればいいんです。
日本で学んでくれた留学生は、日本を好きになってくれます。
対峙してみれば同じ人間同士だし。積極的な交流対話を行うことが大切に思います。
東アジア文化都市2017京都を通じて、東アジアの国々との対話が深まることを期待すると同時に、私たちが、日本や京都に移住・滞在されている方々、留学生に対して、多様な文化を認め合い、これからの社会のあり方を一緒に考えていくような契機になることを期待しています。
東アジアの諸国は人口動態、経済市場においてもアジア圏と世界の「成長エンジン」としての位置づけにあります。
東アジアの若い世代が京都に留学し、専門の学識を高めると共に、日本の、そして京都の文化・歴史・産業等を学び、日本人学生や市民との交流を深めることは、将来において、東アジアの安定的な平和に繋がるものといえましょう。
今後、東アジアの留学生が、次代のリーダーとして未来を展望する国際会議などが生まれていくことを期待しています。
Profile
吉田 光一
株式会社フラットエージェンシー 取締役会長