大韓民国演劇祭in大邱 レポート③

Profile
福井裕孝
劇団西一風
2017年6月2日~20日にかけて大邱広域市で開催された「第2回大韓民国演劇祭in大邱」に,東アジア文化都市2017の交流プログラムとして参加した劇団の代表者のレポートです。
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大韓民国演劇祭in大邱に参加して
初めに、公演実現に向けて尽力いただいた京都市、および大邱広域市の皆様に心より感謝申し上げます。
私たちは、同年二月にロームシアター京都で開催された全国学生演劇祭にて、審査員賞を受賞した作品「ピントフ™」を再構成し、上演しました。作品内で明言はしていませんが、日本の単純作業を行う労働現場を題材にした作品です。
創作過程では、日本とは違った文脈の人々にどうすれば触れることができるか、あれやこれやと試行しました。日本との距離感について。私たちの座組には、韓国人留学生の俳優が二人いました。昨年の京都の演劇祭から参加していて、一人は外国人労働者の役で出演していました。この作品を再演することをスムーズに決断できたのも、すでに「外国人」というキーワードがあったからだと思います。
韓国人は普段から稽古場に一緒にいたので、とても身近な存在でしたが、韓国という国は自分の中では馴染みのない遠い場所でした。日本で文献等を調べたり、韓国の子に色々話を聞くことはできましたが、距離感が大きく縮まることはありませんでした。「こんな感じでいいんですか」と疑問に思いながら現地入りしました。大邱の人々は親切かつパッショナブルでした。
劇場はエンターテイメントやショーのような空気で、京都初演から3度目の再演で初めて、カーテンコール後に歓声が上がりました。事実として、作品は成功したのではないかと思います。しかし、どこか腑に落ちなかったのは、「こんな感じでよかったんですか」という疑問がイマイチ消化しきれなかったからです。観劇した現地の人の話をもっと深く聞きたかったと、振り返りながら悔やんでいます。ただ、この公演を経て得た経験は、団体としても僕個人としてもとても大きな財産だと思います。次もし機会があれば、「こうです」と言えるコンディションで臨めるようにしたいと思います。
大韓民国演劇祭in大邱(学生演劇の交流)