子ども映画の多様な広がり〜企画から配給まで〜
このページでは、東アジアの相互理解につながる活動をされている方に、日々の取り組みやその活動にこめた想いについてコラムをご寄稿いただいています。
第三回目は、NPO法人キンダーフィルムフェスト・きょうとの植田真由さんです。
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子ども達に世界各国の上質な映画を届け、映画を通して様々な国の文化や慣習を知ってもらいたい。自分達となにが違い、なにが一緒なのかを考えてもらいたい。そうした思いで続けている子どもによる子どものための「京都国際子ども映画祭」(以下、「子ども映画祭」)。日本やアメリカだけでなく、ヨーロッパや中東、アジアなど多様な国の作品を選定し、上映している。
そんななかでも、近年とりわけ中国と韓国の作品を取り上げることが多くなっている。もちろん、洋の東西問わず作品を選ぶことで、満遍なく世界に目を向けてほしいという気持ちが根底にあるのだけれど、それにしてもやはり、目にとまる作品が中国や韓国の作品だったということがままある。10年ほど前であれば、子どもを題材にした映画の多くはヨーロッパに見られ、そしてそれゆえヨーロッパの作品ばかりになってしまうことも多かった。
しかし、ここ数年のアジアでの子どもを主題にした映画の登場頻度を思い返してみると、なかなかにその盛況ぶりが際立っているように思う。事実、「子ども映画祭」でも『Cheong』(Jung-In Kim/韓国)や『SPROUT』(Ga-eun Yoon/韓国)、『Promise』(Xie Tian/中国)など、韓国・中国の短編作品を取り上げてきた。その後、Ga-eun Yoon監督においては、長編作品『私たち』が今秋日本でも公開されることが決まるなど、その活躍ぶりを目の当たりにしている。

『Promise』(Xie Tian/中国)今年の京都国際子ども映画祭で上映予定。
とりわけ韓国では、ややもすれば「映画は国策だ」と羨望混じりに揶揄されることもあるほどに、国が映画支援にきちんと予算を確保している、らしい。「撮る」だけではなく、その前段階である「企画開発」にも、そして撮った後の「配給上映」にも助成が適用される韓国では、その制度ゆえに、作りたい映画を作ることに挑戦できるまでに門戸が開かれているのかもしれない。(日本では、映画を「撮る」ことは助成の範囲内ではあるけれど、「企画開発」と「配給上映」に対する助成がすっぽり抜けている(参考資料:http://eiganabe.net/diversity))。
成功するかどうかわからない企画から助成するというのはなかなか勇気のいることだし、よほど映画文化を大事にしようという意気込みがないとできないだろう。興行収入を最優先した売れる映画だけでなく、作り手が作りたいものを作れる環境を守ることが映画文化を守ることに繋がるのだろうと、東アジアの映画状況から強く思う。
『東アジア文化都市2017 京都』への期待
たとえば映画でいうと、韓国映画はパク・チョルスやキム・ギドクが90年代から、中国映画ではチェン・カイコーやチャン・イーモウが80年代から活躍し、世界的評価を得ているが、それ以前の韓国、中国映画というのは一般に知られる機会が圧倒的に少ないように感じる。
『東アジア文化都市2017京都』を通じて現代の東アジアの芸術文化に触れることを契機に、現代から過去に遡り、各国の芸術文化の歴史に目を向けられたら・・・。互いの芸術文化をより一層深く理解することで、他分野での関係も深まるのでは、と期待する。
Profile
植田 真由
NPO法人キンダーフィルムフェスト・きょうと 理事長