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中国・韓国における実験音楽への導入

このコーナーでは、京都から東アジアとの相互理解を深めるため、毎回、様々な方に日々の取り組みやその活動にこめた想いについてコラムをご寄稿いただいています。
第一回目は、アジア全体の音楽、カルチャー、アートシーンにまつわる情報を発信しているweb-zine『offshore』を運営されている山本佳奈子さんです。

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2011年、初めてアジアを旅することに決めた。当時インターネット上ではアジアの実験音楽について日本語で書かれたものは少なく、京都パララックス・レコードの店主に薦めてもらった音源や情報を手掛かりに現地を歩き回った。各地で様々なスペース、ライブ会場に出入りしていると、自然と多くの友達ができた。表現者である彼らの活動を日本で紹介したいと思った。数ヶ月の旅から戻り、間髪入れずにweb-zine『Offshore』を立ち上げた。

実験音楽という狭いネットワーク内では、今となっては日本もアジア各地も情報が交差し音楽家も行き来する。しかし少し深い情報へリーチするには、やはりインターネットでは及ばない。ここでは私が知る各地キーパーソンとエピソードを紹介する。

中国における実験音楽といえば、Yan Junはあまりにも世界で有名だ。1973年生まれの彼は、日本やヨーロッパで演奏する機会も多いベテランだ。今、中国では彼より下の世代がシーンを盛り上げている。Yan Junとともに多くのイベントを企画してきたZhu Wenboはまだ30代半ばの音楽家。『Zoomin’ Night』という北京での小さなコンサートシリーズをもう5年以上、数え切れない回数続けており、コンピレーションアルバムなどもリリースする。Yan Junの背中を見て活動してきた彼が、今、北京を中心に中国各地の実験音楽シーンを牽引していく存在になりつつある。

韓国においても同じように実験音楽を紹介するとすれば、小さなイベントシリーズdotolimなどについて言及するべきだと思うのだが、ここでは韓国で「実験音楽」ではなく「実験的な音楽活動」をする人物としてパク・ダハムをあらためて紹介したい。音楽レーベル経営、ノイズ音楽の演奏、クラブDJ、そしてイベント企画など、音楽にまつわる様々な活動を同時並行でこなす。彼とは映画『パーティー51』の日本上映において協働した。多ジャンルの現場にコミットし、根っからの音楽好きで音楽オタク。が、彼は音だけでなくアートワークにもこだわる。「音楽を人に伝えるとき、デザインが重要」と言う彼に大きく共感した。シン・ドンヒョクやシン・ドクホなどの精鋭デザイナーと共にCDジャケットやポスターを制作し、アートと出版において前衛的なプロジェクト展開を続ける書店The Book Societyとも協働する。

北京のとあるバー。若手実験音楽家やアーティストが深夜に集まる。

北京のとあるバー。若手実験音楽家やアーティストが深夜に集まる。

東アジア文化都市2017京都の開催が決定するもっと前から、Yan Junもパク・ダハムも京都に来て演奏したことがあったし(そういえば、私がパク・ダハムと最初に会ったのは木屋町通りだった)、政治上では関係が悪いと言われる時期でも、京都の音楽関係者たちは両国の音楽家を受け入れてきた。草の根のもっと下、アンダーグラウンドで活動する私たちは、大きな枠組みやスポンサーに頼ることができない。だから自分たちのできる範囲で実践から始めるしかなく、そのアクションは国境を越えた交流を一足早く深めてきた。今年1年間の祭典で京都市にもたらされる出来事や情報を手掛かりに、より多くの表現者たちがアクションを起こすチャンスに恵まれればと思う。

Profile

山本佳奈子

山本佳奈子

Offshore

アジアの音楽、カルチャー、アートを取材し発信するOffshore主宰。主に社会と交わる表現や、ノイズ音楽、即興音楽などに焦点をあて、執筆とイベント企画制作を行う。尼崎市出身、那覇市在住。http://www.offshore-mcc.net
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